研究概要 |
1.(1)口腔扁平上皮癌からわれわれが樹立した培養細胞株HNOS株5×10^5個をヌードマウス尾静脈内に投与すると2週間後には肺表面に100個以上の転移結節を形成し,肺湿重量が正常肺の3-4倍に増加した。この転移系にフッ化ピリミジン系抗癌剤の一つである5'-DFURを60,300,600mg/kg連日経口投与すると,明かな肺転移抑制効果が認められた。600mg/kg投与群では肺湿重量が正常肺のそれと同等であり,実体顕微鏡による観察でも肺転移巣が全く認められなくなった。 (2)さらにHNOS株2×10^5個をヌードマウス皮下に移植し2週間後から5'-DFURを60,300mg/kg連日経口投与(2W)し、その後の腫瘍体積の変動を薬剤非投与群と比較して,5'-DFURによるHNOS株の腫瘍増殖抑制効果を検討した。その結果60mg/kg投与群では腫瘍増殖抑制効果は認められず、300mg/kgで明かな増殖抑制効果が認められた。以上の結果から5'-DFURはHNOS細胞に対して未だ腫瘍増殖抑制効果の認められない投与量(60mg/kg)で,既に肺転移抑制効果を示すことが明かとなった。 2.その過剰発現がいくつかの腫瘍において転移や予後と関連していると報告がなされている接着分子の一つである変異型CD44分子のうちCD44v6に関して,免疫組織化学的に臨床生検材料を用いて検索した。その結果,正常口腔粘膜では有棘層を中心として強く認められる陽性染色所見が扁平上皮癌では著しく減弱しており,しかも減弱の程度の強い腫瘍ほどリンパ節転移を生じ易い傾向が認められた。
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