研究概要 |
口腔悪性腫瘍(舌口底癌)患者の外科的治療後に発生の可能性が大なる摂食嚥下機能障害および発音機能障害について、術前・後の検査を行いこれらの機能障害の程度を把握することによって、口腔内に矯正装置を作成・装着させ機能障害の改善を図ったので報告する。対象は、当科で治療を行った舌口底癌患者10例(男性6例,女性4例)であり、舌可動部半側切除が男性3例、女性4例、可動部2/3以上の切除が男性の3例であった。舌切除後の再建は、腹直筋皮弁が男性3例、前腕皮弁が男性3例、女性4例であった。術前と術後1ヶ月以内に嚥下機能検査(X線透視検査,内視鏡検査)、発音機能検査(会話明瞭度検査,日本語100音節明瞭度検査)を行い、比較検討した。術前にみられなかった嚥下機能障害、発音機能障害が全術後例に認められた。嚥下機能障害は、X線透視検査による動的観察において嚥下第1相(口腔期)と第2相(咽頭期)に認め、誤嚥(喉頭挙上期型,喉頭下降期型,および混合型)が確認された。発音機能障害は、全症例に歯音,歯茎音,硬口蓋音を含めた大部分の子音に誤りが認められ、会話明瞭度は近親者との意志疎通が可能かそれ以下であった。術前の検査データに近似させるべく上顎口蓋部に矯正補助装置を装着させ、しかも装置の口蓋部の厚さを増加調節することによって嚥下機能および発音機能の改善が得られ、また、装置の口蓋部を中空性にすることによって重量の軽減化と維持安定が得られた、嚥下機能では第1相の障害の改善(bolusの口腔内停滞の防止、bolus形成の容易化)、第2相の障害の改善(誤嚥の防止)がみられ、発音機能では会話の実用的レベルまで改善がみられた。
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