研究概要 |
1.悪性形質獲得における活性酸素の影響:異物に反応する宿主細胞とQR-32細胞とを移植し、増殖してきた腫瘍より樹立した18系の培養株では、元のQR-32細胞と異なり100%に悪性化進展を認めた。また、in vitroのPGE_2産生量を悪性化進展の指標とし、宿主細胞による悪性化進展の要因について解析した。その結果、この系にradical scavengerであるcatalase, mannitol添加より顕著にPGE_2産生量が抑制された。即ち宿主細胞から放出される活性酸素がQR-32細胞の悪性化進展に関与していることが示された。 2.次硝酸ビスマスおよびPSK投与による悪性化進展の抑制効果:異物(ゼラチンスポンジ)とともにQR-32細胞を移植する悪性化進展モデルを用い、次硝酸ビスマス,PSKを投与し、悪性化進展への影響および腫瘍局所の内因性radical scavengerの誘導を検討した。その結果、悪性化進展率では非投与群で100%に対し、次硝酸ビスマス経口投与群では57%、PSK腹腔内投与群、経口投与群ではそれぞれ50%と各々有意な抑制を認めた。さらに各群での腫瘍組織局所の内因性radical scavengerをImmunoblotting法およびimmunohistostain法を用い比較検討した所、次硝酸ビスマス経口投与群の腫瘍組織ではMetallothioneinが、またPSK投与群では内因性radecal scavengeであるCu/Zn-SOD, GSH-Pxtorの発現増強が認められた。 Mn-SOD遺伝子導入による悪性化進展の抑制効果:活性酸素により高率に悪性化するQR-32細胞とその率が低いQR-29細胞があり、この原因として細胞内抗酸化酵素の関与が示されてきている。そこで、Mn-SODに注目し、QR-32細胞にMn-SODcDNAを導入した。その結果、悪性化進展率が60%から20%に低下し、細胞内Mn-SODが悪性化進展に深く関与していることが示された。
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