研究概要 |
歯性感染症患者の閉塞膿瘍から、細菌を分離同定したところStreptococcus milleri group(S. constellatus, S. anginousus, S. intermedius)が高頻度に分離され、起炎菌としての関与が強く示唆された。また、S. milleri group分離株のマウス皮下接種により、単独でも膿瘍形成能があることを確認した。歯性感染症の臨床症例が混合感染主体であることから、S. milleri group臨床分離株と、同じく高頻度に分離される嫌気性菌Fusobacterium nucleatumの基準菌株を用いて、単一菌接種及び混合接種によるマウス皮下膿瘍形成能について検討を行い、菌種間の膿瘍形成における相互作用について比較した。各菌株とも10^7/mouseレベルで接種した場合、混合接種群の膿瘍表面積はS. milleri groupの単独接種群に比較して増大し、またF. nucleatum単独接種群よりもやや大きくなる傾向を示した。膿瘍からの菌の回収は、S. milleri groupではいずれの株においても混合接種時に単独接種時よりも増加したが、逆にF. nucleatumはS. intermedius、S. constellatusとの混合接種群において単独接種群よりも回収が減少する傾向であった。膿瘍の病理組織所見では単独接種及び混合接種時に大きな差異は認めなかった。 S. milleri groupには組織破壊に関連する多糖体分解酵素hyaluronidase, chondroitin sulfate A depolymerase活性を持つものがあることから、zymogramによりマウス膿瘍のホモジネートを試料としてこれらの酵素活性を検索した。その結果、膿瘍局所で菌由来と思われる多糖体分解酵素活性がS. intermedius接種群において確認され、病原因子の一つとして感染症の拡大に寄与している可能性が示唆された。
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