研究概要 |
【目的】口腔扁平苔癬(Oral lichen planus;OLP)は、難治性の慢性炎症でありその原因の一つに肝疾患が示されている。以前、口腔癌は他の消化器癌と比べて高率にHCV抗体ならびにHCV RNAが検出されることを報告したが、今回私共は、OLPと肝疾患との関連を明らかにするための検討を行なった。すなわち、OLPを有していた45人の患者に対して、肝障害の有無、さらにhepatitis C virus(HCV)やhepatitis B virus(HBV)感染とOLPの関連について検討を行った。【対象】1993年11月から1994年4月までに久留米大学医学部口腔外科を受診したOLP45人(M/F;18/27人)である。【方法】HBsAg,HCV抗体(PHA法,第2世代),HCV RNA(RT-PCR法)の検出を行なうと共に、肝障害の有無を血液生化学的検査ならびに腹部超音波検査で検討した。【結果】45人の患者の中で20例(44.4%)にsAST値、19例(42.2%)にALT値の異常が認められた。血清中のウイルスマーカーの検索では、HBsAgは4例(8.9%)に認められたが、HCV抗体やHCV RNAはOLP患者の各々28例(62.2%)と27例(60.0%)に検出された。HCV抗体、あるいはHCV RNAのいづれかが検出されるOLP患者は64.4%(29/45)と極めて高率であった。また、OLP45例のうち35例(77.8%)に肝疾患を認めた。その内訳は、C型慢性肝炎は、22例(49%)、C型の肝硬変2例、肝細胞癌2例、HCV carrierl例、B型慢性肝炎3例、B+C型慢性肝炎1例、アルコール性肝障害3例(このうち1例はHCV抗体陽性)、体質性黄疸1例であり、45例中10例(22.2%)には、異常所見が認められなかった。我々の研究からOLPと肝疾患との間には密接な関連のあることが明らかとなり、特にHCV感染がOLPの発生に重要な役割を演じている可能性が示唆された。
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