研究概要 |
ブラッシングによる歯肉マッサージが歯肉微小循環機能に及ぼす効果を明らかにするために,イヌ実験的歯周炎歯肉にブラッシングによる歯肉マッサージおよびプラーク除去の処置をそれぞれ単独または併せて行うことによる歯肉微小循環機能の変化を比較した。その結果,処置なしの部位を除くすべての部位で歯肉組織酸素分圧,ポケット酸素分圧,ヘモグロビン酸素飽和度の上昇を認め,特にブラッシングによる歯肉マッサージを行った部位,及びブラッシングによる歯肉マッサージとプラーク除去を併せて行った部位でポケット酸素分圧の上昇が著明であった。また,炎症改善の臨床効果については,プラーク除去単独あるいはブラッシングによる歯肉マッサージとプラーク除去を併せて行った部位ですべての変数に改善効果が認められた。一方,ブラッシングによる歯肉マッサージを単独で行った部位では,プラーク指数,プロービングデプス,アタッチメントレベルに改善効果が見られず,歯肉炎指数の変化も小さかった。しかし,ポケット温度,ペリオトロン値に改善効果が認められた。プラーク除去に加えてブラッシングによる歯肉マッサージを行った部位では,プラーク除去単独の場合に比してポケット温度,アタッチメントレベルの改善が顕著だった。以上のことから,ブラッシングによる歯肉マッサージは,歯周ポケット内への酸素供給を上昇させるものと考えられる。このことにより,歯肉炎症の改善におけるブラッシングによる歯肉マッサージの有用性が示唆された。今後さらに,歯肉血流量をパラメーターとした歯肉微小循環動態の変化を追究したい。
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