研究概要 |
Porphyromonas gingivalisは歯周病の主要な原因細菌である.この菌の菌体の表層には線毛とリポ多糖体(lipopolysaccharaide:LPS)が存在しており,菌周病の発病や病像の進行に深く関わっていると考えられる.そこで本研究では今まで別々に検討されてきた両者の性質をお互いの関連性という視点から検討した. 使用菌株としてはP.gingivalis381,HG564株の2株と,381株とLPSの抗原性が等しいが,線毛の発現が見られない381FL株,また別の無線毛菌株として報告されているW50株を用いた. 各P.gingivalis全菌体より温フェノール水法によってLPSを抽出し精製した.この精製LPSを申請者が以前作成した抗381株LPSモノクローナル抗体を用いてゲル内沈降反応を行った.その結果W50株由来のLPSは抗381株LPS抗体と沈降線を作らなかったが,他の3株由来のLPSは抗381株LPS抗体と融合する沈降線を作った. 次いで上記の線毛非発現菌株より染色体DNAを抽出し,そのフィンブリリン遺伝子を,すでにクローニングされた菌株の線毛遺伝子(fimA)をもとにPolymerase chain reaction(PCR)を行ってfimA遺伝子を増幅しクローニングした.これらfimA遺伝子のDNA配列を決定し,既知のfimA遺伝子の配列と比較した. その結果,無線毛株W50株のfimA遺伝子はHG564株のものと酷似していたが,開始コドンと推定される部分に変異が存在し,そのために線毛が発現しないものと考えられた.またおなじ無線毛株の381FL株ではかなりの配列の異なりが見られ,明確なオープンリーディングフレームが認められなかった. これらの結果よりP.gingivalisの線毛とLPSにはかなりの多様性が存在していることが示唆された.
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