研究概要 |
磁気位相空間を応用した6自由度顎運動測定器によるIIA期の小児2名の顎運動の測定結果から,この時期の小児においては習慣性開閉口運動のような比較的容易で再現性が高い運動を行っても,顆頭運動は非常に不安定であり,切歯点の運動では開口時と閉口時の顎運動軌跡がほぼ一致しているにもかかわらず,顆頭運動経路は上下的に幅をもつこと確認された。これは顎関節の形態がまだ発育途上である小児の顎運動の特徴的な所見ではないかと考えられた.しかし,顆頭運動の解析には顎運動測定器の測定精度が多大な影響を及ぼすため,現在の測定器では精度的にはまだ不十分ではないかと考えられる.今後さらに高精度の顎運動測定器を用いて被験者の数を増やしこの点について明らかにしていく予定である. また習慣性顎関節脱臼の症状を有する14歳の女児の症例に対して,ディジタル方式顎運動測定器(MM.JI)による6自由度顎運動の測定,歯列模型の計測による歯列の3次元形態データの収集ならびに顎関節断層X線写真からの顎関節3次元再構築からなる「顎機能診断システム」による顎機能診断をおこなった.本症例の習慣性顎関節脱臼は咬合異常によるところが大きいものと診断し,左側上顎犬歯ガイドの装着による治療を行ない,装着前後での顎運動を測定したところ,装着後の切歯点における顎運動は装着前に比較して運動範囲が著明に増加した.しかし習慣性顎関節脱臼に関してはまだ完治にはいたっておらず,夜間使用のスプリント治療を追加して経過を観察中である.今後MRIによる検査を追加し,経過とともに顎運動測定をおこなって顎機能の診断を続けていく予定である.またこの結果については第34回日本小児歯科学会大会において発表予定である.
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