妊婦(胎生期)から乳児期、1歳6カ月・2歳・2歳6カ月・3歳・4歳・5歳の各時期に、歯科健康診査を行い、生活習慣・食習慣調査、口腔内診査・歯口清掃・フッ化物歯面塗布等により口腔衛生指導・管理を行った小児について、そのような就学前の予防教育・予防行動が、就学後の「自分の歯は自分で守る」という歯科保健行動にどの程度持続効果があるか検討するために本研究を行った。 調査対象は、徳島県名西郡石井町の5つの小学校の1年生252名、6年生310名である。 調査結果は次のとおりであった。(1)1年生、6年生ともに厚生省歯科疾患実態調査と比較して、無齲蝕者率が低く、未処理歯保有者率が高かった。(2)乳歯の未処置歯率を除き1年生6年生ともに厚生省歯科疾患実態調査と比較して、乳歯および永久歯の健全歯率が低く、未処置歯率が高かった。(3)1年生の中で、4歳児歯科検診または5歳児歯科検診を受けたものは、厚生省歯科疾患実態調査と比較して、無齲蝕者率が著明に高く、未処置歯保有者率は著明に低かった。(4)6年生では、4歳児歯科検診または5歳児歯科検診を受けた者の無齲蝕者率および未処置歯保有者率は厚生省歯科疾患実態調査結果と近似していた。 以上の結果から、調査対象地区は全国平均と比較して、齲蝕の好発地域であり、未処置歯のまま放置する者の率が高いことが明らかになった。そのような地域で、4歳児または5歳児歯科検診を受けた者は、受診当時齲蝕予防に関心の高い保護者に保育されており、1年生検診時にもその保有環境が持続していることが示唆された。しかし、このような就学前歯科健診の効果は6年生までは持続していなかった。 以上のような結果から、就学前小児に対する歯科健康診査時には、「自分の歯は自分で守る」という歯科保健実践行動が生活習慣として身につくようさらに予防教育方法に工夫がなされなければならないとともに、小学校保健教育において常に強化されなければならないことが強く示唆された。
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