研究概要 |
実験的歯牙移動に及ぼすオステオカルシン局所投与の影響を経時的に検索する目的で,エルジロイクローズドコイルスプリングを用いて,ラット上顎右側第1臼歯を30グラムの矯正力で近心方向に移動した.実験群としてオステオカルシン1μgをラット第1臼歯根分岐部にマイクロシリンジを用いて投与した.対照群としてはPBSを投与した.次に投与開始後,1,2,3,4,5日目に一群6匹ずつ屠殺した.通法に従い,上顎骨のパラフィン切片を作製し,破骨細胞のマーカーである酒石酸耐性フォスファターゼ染色を行った.両群ともに1日目では近心歯槽骨に破骨細胞は認められなかった.オステオカルシン投与群では対照群と比較して2日目,3日目に著明な破骨細胞の増加を認めた.一方,対照群ではオステオカルシン投与群に比べ,破骨細胞数は明らかに少なかった.また,破骨細胞の出現のピークも4日目とやや遅れていた.これらの結果からオステオカルシンの投与により局所の破骨細胞が増加し,歯牙移動の促進が起こったことが示唆された. 次にこのオステオカルシンの効果をオステオカルシンに対する中和抗体で阻害できるかどうかを検討する目的でラットオステオカルシンアミノ末端20残基に対する抗体を作製した.オステオカルシンアミノ末端20残基(N20)を合成し,この合成ペプチドをKLHにコンジュゲートした.このN20-KLHをFCAと乳化させ,家兎に免疫した.得られた抗血清からラットオステオカルシンのN20ペプチドをリガンドとしたsepharose CL6Bカラムを作製し,抗N20IgGをアフィニティー精製した.この精製により,抗N20IgGを約10mg得ることができた.得られた抗体の特異性ならびにタイタ-はwesthm blottingで確認した.westhm blottingレベルで,2000倍希釈で十分検出可能である比較的タイタ-の高い抗体を得ることができた.
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