矯正的歯の移動前後におけるバイオメカニカルな応答と形態学的評価を行うために雑種成犬の上顎第切歯を被験歯とし近心方向へ約150gで7日間実験的に歯を移動した。 移動前後において静的粘弾性解析を行うとともに歯根膜の形態学的観察を光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)にて行った。 静的粘弾性解析において両群ともに瞬間的荷重に対する最大変位量の変化は二相性の変化を示し、対照群に比較して実験群では変位量が増加した。60秒持続的荷重におけるクリープ量の変化は、対照群に対して実験群でいずれの荷重においても増加し、遅延時間は短縮した。 形態学的には、弾性系線維染色(オルセイン染色、レゾルシン・フクシン染色、前酸化処理を行ったレゾルシン・フクシン染色)を施した光学顕微鏡観察において、弾性線維、オキシタラン線維を確認した。また、対照群と比較して実験群において配向性の変化および量的変化が認められた。走査電子顕微鏡観察から、弾性線維は直径約1μmのコラーゲン線維より太い線維で、表面構造に50nm以下のmicrofibrilが観察された。透過電子顕微鏡観察より弾性線維のmicrofibrilと無定形物出を確認した。 以上より、矯正学的歯の移動前後いおける歯根膜のバイオメカニカルな応答は、コラーゲン線維と弾性系線維の形態学的相違により惹起されることが示唆された。
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