研究概要 |
1)ラジカル的アシルオキシ転位の原料の合成(4', 5'-不飽和チミジンに対する親電子付加反応) 4', 5'-不飽和チミジンに対し種々のカルボン酸のトリエチルアンモニウム塩の存在下、N-ブロモコハク酸イミド(NBS)を反応させた結果、ピバリン酸やプロピオン酸を用いた場合には反応は進行せず、原料回収に終わった。唯一、酢酸のトリエチルアンモニウム塩の存在下、NBSを反応させることにより(アセトキシ-ブロミネーション)、チミジンの4'位にアセトキシ基、5'位にブロモ基を有する親電子付加体(4'位におけるエピマ-の混合物;異性体比main/minor=10/1.8)を94%の収率で合成することに成功した。 2)ラジカル的1, 2-アシルオキシ転位による4'-炭素置換チミジンの合成 親電子付加体の混合物をベンゼン中、アリルトリブチルスタナンの存在下ラジカル開始剤としてAIBN(加熱条件下での反応)及び(Bu_3Sn)_2(光照射下室温での反応)を用い、アシルオキシ転位反応に付した。その結果、光照射下室温での反応では、転位成績体(4'-C-アリルチミジン)の収率は20%にとどまり、非転位成績体(5'-C-アリル体)が主生成物(61%)として得られ、転位の効率が悪いことが明らかとなった。 一方、AIBNを用いる加熱条件下では非転位成績体の収率は10%に下がり、4'-C-アリルチミジンを主生成物(59%)として立体選択的に得ることができた。 今後他のラジカルアクセプターとの反応を行い、一般性のある4'-炭素置換チミジンの合成法を確立したいと考えている。
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