研究概要 |
我々が以前見い出したアルケニルマロネート誘導体のヨードカルボ環化反応を不斉合成へ展開し、以下に示した結果を得ることができた。 1、キラル補助基を用いるジアステレオ選択的ヨードカルボ環化反応とその応用 アリルマロン酸ビス-(-)-8-フェニルメンチルエステルの反応は高ジアステレオ選択的(94%de)に進行し、良好な収率(89%)で光学活性なヨードメチルシクロプロパン誘導体を与えた。さらに本生成物を短工程および良好な収率でシクロプロパンアミノ酸の有用な合成中間体へ変換した。 2、キラルなチタンアルコキシドを用いるエナンチオ選択的ヨードカルボ環化反応 4-ペンテニルマロン酸ベンジルの反応を、酒石酸より誘導したキラル1,4-ジオール(TADDOL)を不斉配位子とする1当量のチタニウム錯体Ti(TADDOLate)_2存在下行うと、比較的高いエナンチオ選択性(85%ee)で反応が進行した。さらに本反応系に2,6-ジメトキシピリジンを添加すると、反応は20mol%のTi(TADDOLate)_2の存在下でさえ良好な収率で進行し、この際94%eeの生成物を与えた。2,6-ジメトキシピリジンは、副生するヨウ化水素を効果的に捕捉し、Ti(TADDOLate)_2の分解を防ぎ反応の不斉触媒化を可能にしたものと思われる。 3、エナンチオ選択性発現機構の考察 Ti(TADDOLate)_2のエーテル溶液にアセチルアセトンを加えると、(acac)_2Ti(TADDOLate)の結晶が得られる。現在このチタン錯体のX線結晶解析を検討しており、これは本反応のエナンチオ選択性発現機構の解明のために重要な知見を提供するものと思われる。
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