1.鼻炎モデル動物の作成 ラットは外来抗原に対する感受性が低いといわれているが、薬物の経鼻投与実験で汎用されているため、まずはラットを用いることとした。抗原性の強い卵白アルブミン(OVA)を3日おきに計3回、点鼻投与し、抗原感作を行った。感作ラットにOVAの鼻腔内潅流を行うと同時に、エバンスブルー(EB)を静脈内投与し、EBの血液から鼻腔内潅流液への漏出を鼻炎の程度の指標として測定した。その結果、鼻腔内緩流液へのEBの漏出は全く認められなかった。そこで、投与法を鼻腔内投与に変更するとともに、より感作効率を高めるために、フロントの不完全アジュヴァントを同時投与した。しかし、この条件においても、EBの漏出は認められず、鼻炎モデルを作成できなかった。そこで、実験動物を変更し、モルモットを用いることにした。ラットの場合と同様に、3日おきに計3回の点鼻投与を行って免疫を行ない、EBの漏出を測定したところ、有意な漏出が認められ、鼻炎モデルを作成できることが明らかになった。また、同時に、潅流圧を測定したところ、有意な上昇が認められ、鼻炎においてしばしば認められる鼻閉が起こっていることも確認された。 2.薬物吸収挙動の変化 上記1と同様に作成した鼻炎モデル動物を用い、種々の物理化学的性質を有する薬物を含む緩流液を鼻腔内に潅流した。その結果、低分子薬物に関しては、脂溶性が高く粘膜透過性の良好な薬物の吸収が低下する傾向が認められた。これは、毛細血管の収縮にともなう鼻粘膜下の血流量の低下が原因であると考えられる。また、高分子薬物の吸収は若干増大する傾向が認められた。鼻炎発症時には毛細血管の透過性が増大することが知られているが、高分子薬物の吸収性増大の原因の一部は毛細血管透過性の増大であることが示唆された。
|