研究概要 |
名城大学古川らによって合成された新規制癌活性物質ピリドカルバゾール誘導体(MJ-55)の製剤化を検討した. 1.剤型の選択:水・ジメチルスルホキシド(DMSO)を除く有機溶媒に不溶というMJ-55の特性を鑑み,生体へ投与可能な数十種の溶剤を検索した結果,大豆油に可溶なことを見出せたため,剤型はこれをベースとした液状製剤とした. 2.MJ-55含有o/w型乳剤の調整:界面活性剤として水素添加L-α-ホスファチジルコリン1000mgを懸濁させた等張リン酸緩衝液4mlに16.8μgのMJ-55含有大豆油溶液1mlを加えて3時間の超音波処理した場合,平均粒子径が3.1μmのo/w型乳剤が調整できた.なお,本乳剤は細胞培養条件下(乳剤を培地で10倍希釈し,37℃, 5%CO_2下で放置)でも平均径の経時変化を認めず,無菌性も確保されていた.但し,乳剤調整時に7%程度のMJ-55の分解が示唆され,その防止は今後の検討課題である. 3.MJ-55含有乳剤の細胞毒性試験:10^4個のdRLh-84肝癌細胞を用い,培養開始から2日語に,MJ-55濃度0.28μg/mlのDMSO溶液又は同濃度の上記乳剤を含む培地の添加交換を4時間おきに6回(計24時間暴露)繰り返すことで投与を行った.培養開始5日後の細胞数は,対照群(DMSOのみ),5.0×10^5個; MJ-55溶液,9.3×10^3個;比較に用いた同濃度の市販抗癌剤アドリアマイシン(ADR)DMSO溶液,1.2×10^5個;MJ-55非含有乳剤,6.3×10^5個,MJ-55含有乳剤;1.2×10^4個であった.これらの結果から,MJ-55はADRを越える強い細胞毒性効果を示し,乳剤化しても細胞増殖は有意(p<0.01)に抑制され,その効果は十分維持されることが分った.今後,本乳剤の抗腫瘍効果を担癌動物を用いたin vivoにて評価していく.
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