研究概要 |
本研究では、ヒト遺伝子の変異点検出システムである、Triplex Affinity Captureキャピラリー電気泳動を開発し、がんの原因遺伝子をはじめとした様々なヒト遺伝子に生じた変異や多型を選択的に検出することに成功した。 1.がん遺伝子、がん抑制遺伝子をはじめ数種の疾患原因遺伝子の3本鎖DNA形成部位を含むプローブDNAを合成した。さらに、プローブDNAを蛍光ラベル化した。 2.プローブDNAをゲル中に共存させた、新規ゲルキャピラリーカラムを作製し、種々の条件下、種々の標準的なサンプルDNAの電気泳動を行ない、DNAプローブ濃度、キャピラリー温度、緩衝液のpHおよび塩濃度がその泳動挙動に大きな影響を及ぼすことを明かにした。 3.泳動条件と泳動挙動の関係を解析し、サンプルDNAの泳動時間(t)とサンプルDNAとDNAプローブとの会合定数(Ka)との間に、定量的な関係{t=t_0(1+Ka[L]_T}が成立することを実証した。 4.その関係式を基に、がん遺伝子、がん抑制遺伝子をはじめ数種の疾患原因遺伝子の3本鎖形成部位の塩基配列を識別し、変異点を検出する際の最適条件を決定した。さらに、この最適条件下において、いくつかのヒト遺伝子(インターロイキン2, p53がん抑制遺伝子)の変異あるいは多型を30分以内に検出できることを明らかにした。 以上の検討を基礎に、キャピラリー電気泳動の高速性と高分解能とを兼ね備えた高性能変異点検出システムであるTriplex Affinity Captureキャピラリー電気泳動を開発した。ここで開発した新しい方法は、がんをはじめとした様々な疾患の遺伝子診断へ応用可能である。今後は、今回検討したもの以外の疾患原因遺伝子の塩基配列を識別し、より一般的な疾患の遺伝子診断を可能にするシステムの開発を検討中である。
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