ラット、モルモット、ウサギの平滑筋及び心筋組織に対する血小板由来増殖因子(PDGF)の効果について検討し、以下の結果を得た。 1 コラゲナーゼ処理により得られたラット大動脈平滑筋細胞、モルモット大動脈、心室筋、気管平滑筋細胞、ウサギ大動脈、心房筋細胞を電位固定下、PDGFを適用したが、イオンチャネル電流の活性化現象、細胞の収縮などは観察されなかった。 2 上記細胞のカルシウムチャネル電流、カリウムチャネル電流に対してPDGFは抑制・増強いずれの効果も示さなかった。 3 ラット及びモルモット大動脈平滑筋の収縮に対しても、PDGFは効果を示さなかった。 4 PDGFと同様に細胞増殖に関与しているといわれる上皮由来増殖因子EGFの平滑筋・心筋細胞に対する作用に関しても検討したが、作用はほとんど見られなかった。 以上のことから、平滑筋・心筋組織に対してPDGFは急性的な効果(投与直後に観察されるような筋の収縮反応やイオンチャネル電流の活性化など)を示さないと考えられる。 しかしこの研究の過程において、強力な収縮性のペプチドであるバソプレシンやプリン受容体活性化薬の一つであるウリジン3燐酸がラット大動脈平滑筋細胞において、細胞内カルシウム濃度の上昇を伴った振動性のイオンチャネル電流を活性化させることを見出した(日本平滑筋学会発表済投稿準備中)。またこれらの薬物により活性化されるイオンチャネル電流の種類が、細胞培養により変化する可能性を示唆する結果を得ており、増殖因子との関係を含め、この点についてさらに検討を加えてゆく予定である。
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