本研究では両生類のチトクロームP-450に着目し、これまでにアフリカツメガエル肝ミクロゾーム画分よりオクチルアミノセファロース、Mono Q (FPLC)およびMono Pカラムクロマトグラフィー(FPLC)を行いpH6.7で溶出される分子量52kDaのチトクロームP-450を精製している。今回この分子種を大量に精製する過程で、最終ステップのクロマトフォーカシングで異なる挙動を示すP-450分子(p15.9)を見出した。これら2つのP-450のN末端アミノ酸配列は、決定した15残基までは完全に一致していた。再構成系で薬物代謝活性を調べたところ、両者とも哺乳類のP-450に比べると弱いがアニリン水酸化、アミノピリンN脱メチル化、p-ニトロアニソールO脱メチル化活性が認められ、ヘキソバルビタール水酸化活性は検出されなかった。全体にpI5.9のP-450の活性はpI6.7のP-450よりもやや弱かった。次に精製したP-450 (pI6.7)についてリシルエンドペプチダーゼ消化断片のアミノ酸配列を決定した。これに基づいて合成したプライマーを用いてRT-PCRによりプローブを作製し、アフリカツメガエル肝cDNAライブラリーをスクリーニングした結果、全長2235bp、494残基のアミノ酸をコードするクローンを得た。この配列を他種生物のP-450と比較すると、ラットのCYP2G1と55%のホモロジーを示したのをはじめ、CYP2ファミリーとの間により高い相同性が認められた。一方、P-450 (pI6.7)の精製標品をウサギに免疫して抗血清を調製し、さらにアフィニティー精製した抗体を用いてイムノブロッティングを行い、このP-450を定量するシステムを構築した。今後、この系を用いてアフリカツメガエルの変態前後の各ステージにおけるこのP-450分子の発現パターンを調べ、生活環境の変化との対応について検討していきたい。また、pI5.9のP-450分子についても同様に解析を進める予定であり、この2種のP-450を識別する際に等電点電気泳動が有効な手段になると考えられる。
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