グルタミン酸神経毒性に対するプロスタグランジン(PC)E_2の保護作用機序を検討する目的でラット初代培養大脳皮質ニューロンを用いて実験を行った。 最初にPGE_2の保護作用発現に関与するPGE_2受容体サブタイプの検討を行った。グルタミン酸神経毒性に対してEP_2受容体作動薬のbutaprostはPGE_2と同程度の保護作用を発現したがEP1受容体作動薬の17-phenyl-ω-trinor-PGE_2おのびEP_3受容体作動薬のM&B28767は保護作用を発現しなかった。次に諸種興奮性アミノ酸に対するPGE_2の作用を検討したところ、PGE_2はグルタミン酸およびN-methyl-D-aspartate(NMDA)誘発神経毒性を抑制したが、non-NMDA受容体作動薬のカイニン酸神経毒性は抑制しなかった。EP_2受容体はGs蛋白と連関することからPGE_2の細胞内cyclic AMP含量に対する作用を検討したところ、PGE_2は保護作用を発現した濃度と同じ濃度範囲において細胞内cyclic AMPレベルを上昇させた。さらに、グルタミン酸神経毒性に対するPGE2およびbutaprostの保護作用はcyclic AMPdependent-protein kinase(PKA)阻害薬であるH-89によりほぼ完全に拮抗された。グルタミン酸神経毒性はCa^<2+>の過剰流入により惹起されることからグルタミン酸誘発Ca^<2+>流入に対するPGE_2の作用を検討したが、PGE2は有意な作用を発現しなかった。さらにPGE_2は一酸化窒素(NO)生成試薬により誘発される神経毒性は抑制しなかった。 以上の知見は、PGE_2がEP_2受容体を介してNMDA受容体性グルタミン酸神経毒性を選択的に抑制することを示唆する。その機序はcyclic AMP-PKA系を活性化しCa^<2+>流入移行NO生成に至るまでの過程を抑制することによると推察される。
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