研究概要 |
1.ヒト成長ホルモン結合蛋白(hGH-BP)の生成機構について ヒトIM-9細胞より、抗ヒト成長ホルモン受容体抗体GHRP2-88に反応する分子量60kDa及び55kDaの蛋白が放出された。ヒト成長ホルモン(hGH)固定化ゲルに結合した画分のイムノブロット法による解析、および化学架橋剤を用いた解析により、これら2種の蛋白は、いずれもhGH結合能を持つこと、即ちhGH-BPであることが明らかとなった。本hGH-BPのhGHに対する親和定数は、4.6×10^8M^<-1>であった。本hGH-BP放出は時間依存的であり、放出量は、1時間当たり、細胞膜上のヒト成長ホルモン受容体の約5%であった。cycloheximide(蛋白合成阻害剤)又はbrefeldin A(小胞体からゴルジ体への輸送を阻害)を用いた実験より、IM-9細胞におけるhGH-BPの生成に、新たな蛋白合成及びその輸送は必要ないことが示唆された。次に、hGH前処理(45 nM hGH、2時間処理により細胞膜上の受容体の90%以上が、細胞内に移行し、速やかに分解される)により、hGH-BP放出は殆ど阻害されたこと、およびtrypsin前処理により細胞膜外側部分の蛋白を分解した場合には、hGH-BP放出は全く認められなかったことから、IM-9細胞より放出されるhGH-BPは、細胞膜上の受容体に由来することが示唆された。本hGH-BP放出は、EDTA及び1,10-phenanthroline処理により濃度依存的に阻害されたが、EGTAでは殆ど阻害さされなかった。EDTAによるhGH-BP放出阻害は、Mg^<2+>及びCo^<2+>の添加により回復がみられた。これらの結果から、hGH-BP放出における金属プロテアーゼの関与の可能性が考えた。 2.ヒト成長ホルモン結合蛋白(hGH-BP)生成の調節機構について hGH(45 nM)添加により、試みたインキュベーション2時間までの条件下では、hGH-BPの放出量は顕著に減少した。これは、受容体の細胞内移行によると考えられる。一方、Protein kinase Cを活性化する作用を持つホルボールエステルの共存により、hGH-BP放出は増加した。
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