研究概要 |
種々のヒト継代培養肝細胞を用いてTNF-αの障害性を細胞の乳酸脱水素酵素(LDH)の培地中への放出量を細胞障害の指標として測定した。ヒト培養培養肝細胞PLC/PRF/5細胞はTNF-α単独で障害性を示した。細胞より核を分離してin vitroでリン酸化すると分子量21-kと34-kのタンパク質が顕著にリン酸化の上昇を受けることが認められ、これらのタンパク質は核より0.6MのNaClでは抽出されなかった。またこれはTNF-α処理後十数時間後に認められ、また抗Fas抗体処理しても同様な結果が得られた。TNF-αおよび抗Fas抗体処理後DNAの断片化が認められアポトーシスをおこしていることが明らかとなった。細胞核より強塩の2.2MのNaClで抽出した核タンパク質を同様にin vitroでリン酸化すると多くの他のタンパク質のリン酸化は抑えられ、21-kおよび34-kのタンパク質が顕著にリン酸化された。リン酸化部位はほとんど全てのセリン残基であった。しかしこれはin vitroでハービマイシンA存在下でリン酸化が一部抑制されたので、リン酸化の過程せチロシンリン酸化酵素が関わっているものと考えられた。またHepG2細胞はTNF-α単独では細胞障害性を示さないが、アクチノマイシンD存在下TNF-α処理により障害性を示し、核の21-k,34-kタンパク質のリン酸化が上昇した。このことから21-k,34-kタンパク質はアポトーシスと深く関連し、そのタンパク発現は転写レベルでは制御をされていないと考えられた。(以上の内容は科学雑誌Eur. J. Biochem., 232, 134-140(1995)に掲載された。) 2.2Mで核から抽出された21-kと34-kタンパク質は塩濃度を下げると不溶画分に移行するがこれを0.4N硫酸で処理するとコアヒストンがすべて抽出されたが21-k,34-kタンパク質は不溶画分に残ったので核DNAとの結合性は高いがコアヒストンとは異なる挙動を示すものであった。また両タンパク質の合成レベルを検討しても、TNF-α処理により差は認められなかった。現地点では両タンパク質のリン酸化の上昇は、アポトーシスをおこしてDNAが断片化した結果DNAに結合していたこれらのタンパク質のリン酸化部位が脱リン酸化等の結果増加したのではないかと考えている。
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