慢性関節リウマチなどの慢性炎症性疾患を解析するために開発された炎症モデルであるラットの再燃型アレルギー性空気嚢型炎症モデルでは、アレルギー機序に基づく炎症反応を再燃させると、急性のアレルギー反応で認められるアナフィラキシ-性の血管透過性亢進反応は認められないが、炎症局所での血管透過性は徐々に亢進する。そこで、本モデルの炎症再惹起後の血管透過性亢進を誘発する因子の解析を試みた。 その結果、アレルギー機序に基づく炎症反応を再惹起した後経時的に採取し炎症滲出液中には、血管透過性を亢進させる因子(血管透過性亢進因子)が新たに産生されていることがラット皮内反応により確認された。炎症滲出液をイオン交換クロマトグラフィーにより分画すると、血管透過性亢進因子は異なった2つの塩濃度で溶出され、炎症滲出液中には少なくとも2種類の血管透過性亢進因子が存在していることが示唆された。そのうち1つの分子量は約35kDaであった。 ラット皮内反応において、本因子の活性は抗ヒスタミン・抗セロトニン薬を同時に投与することにより抑制されたことから、本因子はヒスタミン(あるいはセロトニン)を介してその作用を発現していることが示唆された。また、ステロイド性抗炎症薬(プレドニゾロン)を前投与した後に炎症反応を再惹起すると、炎症滲出液中の血管透過性亢進活性は低下したが、非ステロイド性抗炎症薬(インドメタシン)を前投与した場合は変化は認められなかった。従って、ステロイド性抗炎症薬は、これらの因子の産生を抑制し、あるいは活性を阻害することにより抗炎症効果を示していることが示唆された。
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