研究概要 |
文献で報告されたサイトカラシン類による赤血球グルコース輸送担体の阻害濃度と構造解析の結果では、サイトカラシンBおよびAのα,β-不飽和ラクトンとγ位水酸基ないしケト基によって決定づけられる14員環構造のコンフォメーションをMM計算およびH-NMR測定とで確認し、その立体構造と活性との比較から活性コンフォマ-を明らかにした。そこでさらにサイトカラシンとの構造類似性が高いと考えられるブレフェルジンAとその誘導体の立体構造の解析を行い、生理活性の予測を行った。 この標的タンパク質となる赤血球バンド4.5(グルコース輸送担体)は膜貫通型で、膜表面側のグルコース認識部位がトリプシンによる切断を受けることが知られている。そこでTPCK処理トリプシンの活性に対するグルコースの阻害を測定した。赤血球膜を強アルカリ(NaOH)抽出またはカオトロピックイオン(KI)抽出法によって膜内在性タンパク質の分離を行ったところ分子量93kDa(バンド3、アニオン輸送担体),60kDa(バンド4.5)の2つのタンパク質を単離した。バンド3はモノクローナル抗体を用いた解析の結果、TPCK処理トリプシンによって52.42.19kDaの3種類の膜中フラグメントになることを明らかにし、これ以外の38.33.26kDaの3つのバンドがバンド4.5に由来するフラグメントである可能性を見いだした。そこで、この系を用いてグルコース輸送担体に結合する化合物を加えたところバンド4.5の断片フラグメントの生成が抑制されたが、バンド3由来のフラグメント生成と比較したところ定量的に一致する結果が得られないことがわかった。そこで現在、TPCK処理トリプシンの活性に対するグルコースおよびその構造類似化合物による抑制作用を検討中であり、この問題を解決した後サイトカラシンとブレフェルジンとの基本骨格の相違による生理活性の相違を測定する。
|