抗てんかん薬ゾニサミド(ZNS)は、ヒトおよびラット肝ミクロゾーム(Ms)においてp4503Aにより嫌気的条件下において還元的に2-スルファモイルアセチルフェノール(SMAP)に代謝されることを、既に明らかとしてきた。今回、ZNSの還元的代謝機構の解明とその臨床的意義を明らかにする目的で検討を行なった。 1.デキサメサメゾン前処理ラット肝Msにおいて、嫌気的条件下のみならず好気的条件下においても還元的代謝物であるSMAPの生成を認めた。好気的条件下における本反応は、NADPHを電子供与体とする酵素反応であり、さらに、一酸化炭素、ケトコナゾール、シメチジンにより阻害された。また、反応速度論的解析の結果、両逆数プロットにより好気的・嫌気的どちらも一相で解析され、得られたKm値は両条件でほぼ同じであった。さらに、p450 3Aの選択的阻害剤であるトリアセチルオレアンドマイシンにより顕著に阻害された。以上より、ZNSの還元的SMAP生成は、肝Msのp450 3Aの関与により好気的条件下においても反応が進行することが示唆された。 2.ヒト肝MsによるSMAP生成活性は、完全嫌気条件下で最も高く、酵素濃度の増加につれ減少した。しかし、生体内の肝小胞体周囲の酸素濃度といわれている5〜10μMにおいても高いSMAP生成活性が認められた。 3.ヒト肝MsにおけるZNSの還元的SMAP生成に対して、抗てんかん薬ではフェノバルビタール、バルプロ酸、フェニトイン、プリミドンは影響を与えなかったが、カルバマゼピンは阻害を示した。他には、ジヒドロエルゴタミン、シクロスポリンA、ケトコナゾールで強い阻害が認められた。次いでトリアゾラム、ジアゼパム、エリスロマイシン、テルフェナジンで阻害が認められた。非線形体内動態を示すという報告のあるZNSにおいては、p450 3Aを介した代謝阻害により体内動態の変化の可能性が予測された。
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