1.検体保存条件の検討 条件検討の結果、以下のようなことが判った。保存状態は滅菌条件下で血液、バッフィコート、DNA溶液ともに良好な結果となった。保存温度については-20℃、-80℃について検討したが、DNA溶液についてはいづれも良好に保存された。保存用添加物については、遺伝子解析の目的には特に添加の必要はなかった。保存期間についても1年経過したDNA溶液でもなんら変化を伴うことなく再現的にPCR反応に供することができた。 2.CETP遺伝子のPCR法による特異的増幅反応条件の検討 当初予定していたイントロン14スプライスドナー部位のみならず、エクソン15やエクソン10の変異部位に対するプライマーも合成し、全てのPCR反応至適条件を決定した。 3.PCR‐SSCP法によるCETP遺伝子の多型出現条件の検討 イントロン14スプライスドナー部位及びエクソン15については、あらかじめ変異を調べてある患者検体を陽性コントロールとして用いることで検討を行い、良好に多型を検出できる条件を決定した。 4.高HDL血症患者の検体についてのCETP遺伝子変異のスクリーニングと臨床検査としての適応性の検討 当初の予定とは異なるが、当大学附属病院より高HDL血症患者検体約100検体を入手してスクリーニングを行った。同時再現性及び日差再現性はともに良好でり、臨床検査として十分な適応性があると判断された。また、HDL‐C値とCETP遺伝子変異の有無の間にはP<0.05で有意差が認められ、興味ある知見を得た。さらに、計画時には予定していなかったことだが、CETP欠損症の際にアポE含有HDLが増加していることが知られているので、PCR‐SSCP法を用いた本方法の結果との関連についても検討を行った。その結果、高HDL血症患者のうちCETP遺伝子変異を持つ群においては、アポE含有HDL高値の頻度が変異を持たない群に比べて有意に高いことが判明し、CETP欠損症の際の高HDL‐C血症の成因を説明する一つの原因であることが分かった。これについては現在投稿準備中である。 PCR‐SSCP法によるCETP遺伝子解析の非放射性標識による検出法への移行の検討 検討した系はビオチン標識プライマーを用いたPCR法とブロッテイング及びアルカリフォスファターゼ発声法である。結果は良好で、操作性、コスト、再現性、データの保存性などの面でこれまでの放射性標識に比べて臨床検査室レベルへの適用に十分な有用性が認められた。本結果はすでに臨床病理学会誌へ掲載されている。
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