研究概要 |
脳内でのアポタンパクは、特にApoEとアルツハイマー病との関連が注目されて以来一躍脚光を浴びた。また、それ以前にも髄液中に存在するApoEが脳内感染などで上昇し、何らかの形で組織修復に関与しているのではないかとの報告がなされている。しかしながら、脳内でのアポタンパクの生理的および病態的意義についての報告はApoEを除き非常に少ないのが現状である。申請者は、脳内における種々炎症反応と記憶障害について多方面から研究を進めており、本研究では脳内でのApoE、ApoAlなどのアポタンパクに注目し、特に組織修復との関係を明らかにすることを目的として実験を開始した。今年度の成果として、(1)ELISA法によるApoE、ApoAl等のアポタンパクの高感度測定系を確立させると同時に、人および猿の髄液中のアポタンパクの測定を可能にした。(2)人の神経系の培養細胞(SK-NSH,IMR32,A172,U87MG,U373MG等)、マクロファージおよびリンパ球などを培養し、その培養上清の各種アポタンパク濃度を測定することにより、ApoE、ApoAl産生細胞を見いだすことに成功した。これらの成果は国内の学術学会において発表され高い評価を受けた。今後は種々の培養細胞へのinterferon、IL-1、IL6、あるいはTNF-α等の炎症性サイトカインの添加実験および変性疾患および免疫疾患などを中心とした種々神経疾患での髄液中のアポタンパク濃度を測定することにより、各種炎症疾患でのアポタンパク生合成のメカニズムについてタンパクおよび遺伝子レベルで検討する。
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