研究概要 |
現在、入院患者の感染症は社会問題として取り扱われるようになっている。その入院患者の炎症の経過観察にはCRP値が主に用いられているが、十分なものとはいえない。本研究ではα_1-酸性糖蛋白ミクロヘテロジェニティーが、炎症の増悪期、極期、回復期でどのように変化するか、等電点電気泳動法を用いて分析することにより、各種炎症性患者におけるα_1-酸性糖蛋白ミクロヘテロジェニティー解析の有用性を明らかにすることを目的とした。 α_1-酸性糖蛋白のミクロヘテロジェニティーを等電点電気泳動法により分析した結果、健常人血清ではI3.11〜3.59の間に7〜9本のバンドが検出された。さらに、CRP値を用いて炎症を起している患者を検索し、CRP値が上昇する以前から、CRP値が正常範囲内に回復するまで経時的に採血された患者10名についてα_1-酸性糖蛋白ミクロヘテロジェニティーの分析を行った。その結果、CRP値が、極値を示した日またはその3日以内に陰極側のバンドの有意な濃度パーセントの上昇が認められ、CRP値の低下にともない、この濃度パーセントは減少した。また、陽極側のバンドの濃度パーセントは、CRPの上昇と同時またはやや遅れて上昇した。よって本法による、α_1-酸性糖蛋白ミクロヘテロジェニティー分析が、患者の炎症状態の把握に有用であることが示された。 このα_1-酸性糖蛋白のミクロヘテロジェニティー変化の生ずる理由を明らかにするため、シアリダーゼ処理した試料を用いて分析した結果、バンドの変化は見られなかった。よってα_1-酸性糖蛋白の糖鎖部分の変化であることを予想し、レクチン(DSA,ConA)を用いて各バンドの糖鎖分岐数の検討を行った。その結果、炎症極期に出現する陰極側のバンドはConAと親和性が高く、炎症極期には低分岐糖鎖を多く含有するα_1-酸性糖蛋白が血清中に出現することがわかった。
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