研究概要 |
目的:術後精神症状を呈するもしくはそのおそれのある患者に対する看護婦の働きかけや対処のしかた(薬剤の使用を含む)と,患者の精神症状の変化との関係を検討する。 対象:患者は,都内大学医学部附属病院の外科病棟に入院し,手術を受けた成人患者39名(男性27名,女性11名,平均年齢65.7歳 範囲43〜80)で,消化器系疾患(食道2名,胃7名,腸9名,胆3名,肝5名),循環器系疾患(ASO3名,AAA6名)等が主な疾患であった。 方法:術後5日間の患者の精神状態について,福井ら(1988)のSOADスコア(睡眠覚醒リズムの障害,見当識障害,体動・言動の異常,要求・訴えの過多・過少の4項目)により各勤務帯の看護婦に評価・記入を依頼した。さにカルテと看護記録より,患者の属性,診断名,術式,身体的状態,言動,治療内容,看護婦の対応,使用した鎮痛剤・鎮静剤等の情報を抽出し,分析した。(これはビデオ録画の行動分析の予備調査である。) 結果および考察:術後回復過程における見当識障害と体動・言動の異常を主とした精神症状の出現の仕方には,幾つかの類型が認められた。(1)術後2ないし3病日から3日以上継続して出現(4名),(2)術後同様の時期に2日以上3日未満出現(4名),(3) 1ないし2勤務帯以内の一過性の症状が出現(8名),(4)麻酔覚醒の途中のプロセスによると考えられるもの(2名)であった。精神症状の有無に関わらず,睡眠障害(不眠,昼夜逆転)は35名で認められた。対処法では,1対1で看護婦が患者の側に付く,鎮静・眠剤・鎮痛剤の投与,抑制などの頻度が高かった。医師の予測(継続)指示や病棟の対処法が決められている場合は,早期投与がなされ,特にこれらの手順がない場合は対処が遅れる傾向にあった。術前から発症の危険性が高いと予測されている場合は,術後早期に予防的に鎮静剤・眠剤を投与する場合もあった。1対1で看護婦が付くのは,鎮静剤等の投与後患者が睡眠に入るまで看護婦が側にいる場合が多く認められた。 今後の課題:看護婦の非言語的態度の概念の規定,患者の異常の早期発見の時期や直観的判断・対処法の把握,患者の症状把握評価尺度の再検討,ビデオ録画による行動分析や睡眠脳波分析などが必要である。
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