研究概要 |
平成7年8月〜平成7年12月に京都府内,大阪府内,東京都内の産婦人科を受診した妊娠16周〜妊娠28周の初産婦で、同意の得られた者94名を対象に質問紙による調査を行った。対象者の内訳は不妊治療を受け妊娠した初産婦44名(不妊治療群とした),自然妊娠し,母児共に異常なく経過している初産婦50名(自然妊娠群とした)であった。その結果以下のことを得た。 1.妊娠中の不安得点は不妊治療群33.76±15.49点,自然妊娠群29.48±13.05点と不妊治療群に高い治療がみられたが、有意な差は認められなかった。しかし、不安内容については不安有りと答えたものが不妊治療群86.36%,自然妊娠群68.18%であり、具体的な内容については、自然妊娠群の73.33%が「元気な子どの」かどうかについての単独の記載であるのに対し、不妊治療群では自分の身体面での変化に関するものと胎児の状態に関するものが複数記載されていた。また,不妊治療が子供に及ぼす影響に不安を持っているものが10.52%であった。 2.母親役割取得程度については、対児感情は児に対する接近感情42点満点中,不妊治療群が30.72±6.49,自然妊娠群が29.52±9.06点と差は認められなかったが、回避感情において42点満点中不妊治療群9.30±5.10点,自然妊娠群11.24±7.25点と自然妊娠群に高い傾向がみられた。育児準備行動としては、具体的な産後に向けての準備は両群共にほとんどなされていなかったが、不妊治療群で「児のために何かしている」と答えた者が多かった。以上のことより、不妊治療を受けて妊娠した産婦の方が児に対する愛着を示す行動がみられ、児を回避する感情が低い傾向にあったが、妊娠中の不安は強いことがわかった。今後更に例数を重ね、不妊期間,治療内容別に検討を行っている予定である。
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