【研究目的】老人保健施設におけるケアの質を高めることに寄与するために、看護職の実施している日常生活援助の専門性について明らかにしたいと考えた。【研究方法】実際に両職種がケア提供している場面に研究者が入り、参加観察を行うともに、同意を得て適宜8mmビデオ撮影を行う。その後ケア提供者に対してケア提供者の行為の意図やその時対象者に対して考えていたことなどについて聞き取り調査を実施した。データはGrounded Theory Approachを用い逐語的に質的継続的比較分析を行った。【結果】食事介助の場面においては、時々自力摂取している他患に目配りしながら、看護職は要介助者の何人かをラウンドするように介助して回りながら、体調不良者の食事摂取状況、発熱者の水分摂取量など主に要観察者への目配りを行なっていた。一方介護職は、全体に目配りはしているが一人の所に長く関わり、個々の食事行為の完了に関わっていた。入浴介助では、看護職と介護職の相違が明確に現れた点があった。介護職が「怖がらせない」「危険がないこと」を筆頭にあげたのに対し、看護職は「全身の皮膚や状態の観察」を筆頭にあげている。また身体状況やより良い入浴のさせ方などについて、介護職にアドバイスをする役割も果たしていた。オムツ交換も、看護職は健康観察の機会と捉えていた。【考察】看護職と介護職が実際に老人に行っている具体の援助行為はほぼ同じであるが、それぞれが目指していることや注意を払っていることは明らかに違っていた。一言で云うならば、看護職が日常生活の援助を通して健康状態の変化に目を向けているのに対し、介護職の関心は日常生活の円滑な維持に向けられている。互いの職種がどこを担っていかなければならないかについて認識することが大切であると考える。今後看護は特に、対象の健康レベルを見極め、適切な援助方法を判断し、介護職や家族に伝えることができるような力を確立しなければならない。
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