食品の味は、鹹味・甘味・酸味・苦味・うま味など、多種の味が混合した混合味の状態で判断されることが多い。そこで、混合味の識別能について、化学調味料等の及ぼす影響および加工食品の摂取の及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。大学生を対象として官能検査及びアンケート調査を行い、以下の結果が得られた。 1.だし汁・しょうゆ・みりんからなるめんつゆモデル試料を用い、だし汁をかつお節だしと風味調味料だしに変え、みりん添加の有無(味の質の差)及び調味料濃度の濃淡(味の濃淡の差)の識別能を調べた。その結果、だし汁の差による混合味の識別能に有意差は見られず、かつお節だしめんつゆと風味調味料だしのめんつゆとの識別もできなかった。すなわち、通常の使用濃度で化学調味料を使用しても、混合味の識別能には影響を与えなかった。 2.かつお節だしを用いた手作りめんつゆと、市販濃縮品から調製しためんつゆを用いて、質の異なる混合味の味の濃淡を比較させた。その結果、手作りめんつゆ嗜好者は有意に濃淡を識別したが、市販めんつゆ嗜好者は識別できなかった。また、両めんつゆ嗜好者の間で、味の質の差及び味の濃淡の差の識別能には差が見られなかった。 3.一般的な味の好み及び加工食品の嗜好・摂取頻度についてのアンケート調査を行い、手作りめんつゆ嗜好者と市販めんつゆ嗜好者とを比較した。その結果、手作りめんつゆ嗜好者は、あっさり、さっぱりした味を好み、加工食品は好まず摂取頻度も少ない傾向にあった。それに対し、市販めんつゆ嗜好者は、濃厚な、複雑な味を好み、加工食品を好んで摂取頻度も多い傾向にあった。すなわち、加工食品の嗜好や多摂取は、質の異なる混合味の味の濃淡の識別能に影響を与える可能性があることが示唆された。 4.めんつゆモデルを用いた混合味の再現力の測定結果については、現在なお解析中である。
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