研究概要 |
1.N-アセチルスフィンゴシン及びその類縁体の合成とアポトーシス誘導能について Heroldら(Helv. Chim. Acta 71,354,1988)及びMurakamiら(Tetrahedron Lett. 35,745,1994)の方法に準じ、スフィンゴシン=(2S,3R,4E)-2-amino-4-octadecene-1,3-diol及びフィトスフィンゴシンの全合成を行った。この方法はキラルなジアミンとスズを触媒とし、アルデヒド(スフィンゴシンの場合はTMS-アセチレンアルデヒド)とシリルエノールエーテルを縮合させる合成法であり、対掌性は完全に保存されている。スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン及びスフィンゴシンのOH基を個別に保護したもの、2重結合を水添したもの、3重結合としたもの(反応中間体として得られる)、さらにはcis-trans異性体のN-アセチル誘導体について、ヒト白血病細胞株HL60細胞に対するアポトーシス誘導活性を調べた。活性測定は、顕微鏡による核の凝集や電気泳動でのDNAラダーの観察を指標に行った。その結果、種々のセラミド誘導体25μMを細胞に添加した時、16時間後に誘導されたアポトーシス細胞は、セラミドの膜透過型誘導体(C6セラミド,trans体)では約20%であったのに対し、cis体はその約2倍、3重結合を有するものは約4倍アポトーシスを誘導した。2重結合を水添したものでは、活性が認められなかった。アシル基にアセチル基を導入したC2セラミドでも同様の結果が認められ、3重結合体では有意にアポトーシス誘導能が増強した。アポトーシス誘導のメカニズムについては現在検討中である。 2.セラミドの微量定量法の開発について アンスロイリルニトリルを蛍光試薬として、セラミドのアルコール基と反応させ、HPLCで分離、定量する方法の確率を目指してる。これまでに内部標準になるC17セラミドを合成し、これに蛍光試薬を反応させる条件をほぼ確立したが、さらに高い回収率が得られる条件を検討中である。
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