研究概要 |
1.目的 不活性ガス(アルゴンガス)を高圧下で含水食品中に溶解させることによってクラスレート水和物を形成させ、食品中の水構造を変化させ、高圧下における水の構造化と、物性変換あるいは殺菌との関係について実験的に検討することを目的とした。 2.方法 試料を試料容器に充填後、ヘッドスペース部分をアルゴンガスに置換し、封をした。高圧処理を施し、ヘッドスペース部分のアルゴンガスを食品中に溶解させ、水を構造化させた。 (1)牛乳および凍結濃縮・加圧法で創製した無加熱牛乳ゲルのレオロジー特性について、アルゴンガス溶解の影響を検討した。 (2)緩衝液を芽胞菌胞子(Bacillus cereus)に汚染させ、圧力条件(圧力400〜600MPa、時間30,60分、温度20〜40℃)を変化させ、殺菌効果について検討した。 (3)牛乳および凍結濃縮・加圧法で創製した無加熱牛乳ゲルについて、圧力条件などを変化させることにより、食品中の水の構造化と殺菌効果について実験的に検討した。 結果 (1)固形分濃度25%の凍結濃縮乳に蔗糖を0〜0.5Mまで添加し、600MPa,5℃,5分の条件下で高圧処理した無加熱牛乳ゲルの破断特性については、破断応力、初期弾性率いずれもアルゴンガスを用いない場合と比較すると、アルゴンガス溶解による顕著な影響は、認められなかった。また、固形分濃度12.5%の凍結濃縮・加圧乳の粘性率においても、アルゴンガスの影響は、認められなかった。 (2)芽胞菌胞子の殺菌では、加圧時間,加圧温度が高くなるに従い殺菌効果が高まった。アルゴンガスの溶解により生存率は減少し、特に20℃,30℃の低温域でのアルゴンガス溶解の効果が顕著に認められた。 (3)以上の結果より、アルゴンガスの溶解は物性を変えることなく、芽胞菌胞子をより緩和な条件で殺菌しうる可能性が示唆された。
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