本研究の最終的な目的は、「日中に行った身体運動が不眠で悩む高齢者の睡眠プロフィールを改善しうるか」との問題に答えることであった。この問題にアプローチするために、本年度は 1.睡眠プロフィールの測定システムを、心拍変動の解析による自律神経活動のモニタを含めて確立すること。 2.研究室の構成員である若年の被検者を対象に、実際に日中に運動を行わせ、その晩の睡眠に与える影響を観察すること。 を主として行った。若年被検者はいずれも睡眠障害のないという点で高齢者とは異なると考えられるが、若年の被検者についての基本的な現象を確認しておくことか重要と考えられ、また「睡眠実験」の実施は検者の負担から考えても週一程度の頻度でしか行えないことから、高齢者を対象とする調査は、今後の課題とした。 結果として 3.日中の身体運動が夜間の睡眠深度を増加させるという、先行研究と同様の反応がみられたこと。 4.この時期に、身体の休養を司る副交感神経活動の亢進が観察され、運動による身体的消耗を相殺するようにみえること。 などの知見が明らかになった。 睡眠障害のない若年者でもこのような反応がみられることから、高齢者においては、さらに顕著な効果が期待できるとの確信を得た。
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