本研究は入院管理下で治療を行っている肥満児を対象に、個人の体力特性にあった運動プログラムを設定し、肥満児に対する運動療法の効果を明らかにすることを目的とした。対象は単純性肥満児童25名とし、縄跳び、体操等の軽運動を行うM群(10名)、M群の運動+各個人のLT強度での運動(自転車エルゴメータを用い、1日20〜30分、週3〜4回、10週間)を行うLT群(9名)、および、外来治療を行うG群(6名)の3群に分け、形態、呼吸循環能、血液性状に対する運動の得お経を検討した。運動療法前後に各被験者は、自転車エルゴメーターを用いた漸増負荷試験を行い、LA、Vo_2、Vco_2、VE、RQ、HR、RPE等を測定した。また、早朝空腹時に裁決を行い、TG、T-cho、LDL-C、HDL-C、アポA-I・II・B、GOT、GPT、UA等を測定し、運動療法前後で比較検討した。LT群の体重は運動療法前から運動療法後にかけて60.9kgから50.2kgへと減少し、M群は64.4kgから56.6kg、G群は42.7kgから42.3kgへと減少した。体重あたりのVo_2maxは群で有為な増加(25.9->29.1ml/kg/min)を示したのに対し、G群で有意な変化は示さなかった。LT群における運動負荷試験時の血中乳酸変動は、運動療法前に比べ運動療法後で負荷強度-乳酸曲線が右方向に移動し、同一運動強度における乳酸生成量が減少する傾向が示された。また、LT群ではLT発現時の酸素接摂取量も動療法後で増大する傾向を示した(830.2->924.3ml/min)。HDL-C、T-cho/HDL-C、UAなどの血液性状もLT群で有意な改善を示した。以上の結果より肥満児の体力の体力特性に合わせたLT強度での運動は、形態の改善、最大のみならず最大下での呼吸循環機能の向上、動脈硬化やその他の合併症危険因子を低減するなど、肥満の早期治療や成人病予防において有用であることが示唆された。
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