本研究は、外部刺激による細胞内の環境変化に対して応答するストレスタンパク質[HSP(熱ショックタンパク質)]に着目し、運動負荷時の生体にかかるストレスを定量化することを目的とした。すなわち、シドマン型回避学習により、自発的にランニング運動することを訓練されたラットに2時間のランニング運動を行わせ、運動終了後、0、30、60、120、240分に筋肉を含む8臓器を摘出し、各細胞内に発現誘導したHSP(熱ショックタンパク質)72をウエスタンブロッティング法を用い測定することにより、運動ストレスの生体負担度を明らかにしようとした。 得られた結果の要約は以下の通りである。 1)本研究でのラットの総走行距離は、およそ3、800mであり、運動量としては中等度以上であった。 2)今回の実験条件で発現のみられた臓器は肝臓、副腎であり、筋肉や心臓、脳での発現は見られなかった。 3)今回発現のみられた臓器のうち、肝臓は運動終了後30、60分に大きな発現傾向がみられたのに対し、副腎は240分後に最も大きな発現傾向がみられた。 4)運動ストレスに対する反応は各臓器によって異なり、肝臓での反応性が最も早い傾向が伺えることを示唆するものであった。 今後、実験条件等を変え検討していく必要がある。
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