本研究は、健康の維持増進に重要な要因となる休養(睡眠)を効率よくとるために運動が睡眠に与える影響を解明すべく実験を行った。被験者は、精神的健康度(CMI)、性格傾向(Y-G)、体格(%Fat)、体力(Vo2max)がほぼ同様な男子大学生3名(平均21歳)であった。運動は、50〜60%Vo2max強度(120〜135拍/分)の運動を60分間(前後5分間のストレッチングを含む)実施させた。運動の時間帯は、サラリーマンが実施可能な3種類の時間帯(朝食前、夕食前、夕食2時間後)に設定し、各時間帯の運動が睡眠に与える影響について検討した。実験期間は、平成7年8〜10月に実施し、運動効果の持続性を考慮し、各実験の間隔を10日間以上開けて行った。また被験者には、実験開始1ケ月前より食事による摂取カロリーを2500±200kcal、就床時間、気象時間を実験日と同様に指示し習慣性を持たせた。実験は、運動日前日に通常の生活(机上作業)を行い、その日の睡眠と翌運動実施日の睡眠をOSA睡眠調査(睡眠感)、KSS(覚醒時1時間毎の眠気)、睡眠PSG(睡眠段階)、体温、心拍数によって検討した。結果は以下の通りである。OSA睡眠調査では、夕食2時間後の運動時に「入眠感」と「睡眠の直感的内省」で高い値を示した。睡眠PSGでは、夕食2時間後の運動時が運動日前日と比較し、SWSで26.2%、S4で104%それぞれ増加していた。また各被験者からのコメントも夕食2時間後の運動時は、「普段よりよく眠れ、寝起きがすっきりしている」というものであった。これは、KSSの夕食2時間後の運動時の結果とほぼ一致した。体温については、特徴的な結果は得られなかった。以上から考えられることは、夕食2時間後の運動は、睡眠を深くし充実した睡眠感を与え、翌日の覚醒状態を高めるような傾向がある。生体の日内リズムから考えた場合、体温の日内リズムの上昇期より体温の下降期に運動を実施することが快適な睡眠促すのではないかと示唆される。今後、症例を増やし実証していきたい。
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