本研究では、まず、特によい視機能が必要とされるボールゲームの競技者(今回の研究では、特にバレーボール)を対象に、運動視機能(動体視力)が実際の運動パフォーマンスに及ぼす影響を明らかにする。さらに、「センスの差」を越えた速効性のある運動パフォーマンスの向上を目的としたビジュアル・トレーニングを確立させたい。 動体視力とは、動くものを明視する視機能の一つである。この測定法には、Dynamic Visual Acuity(D.V.A.)とKinetic Visual Acuity(K.V.A.)とがあるが、今回の測定は、興和社製AS-4Aを使用しK.V.A法で値を求めた。被験者は、3年以上の運動経験者および現役アスリ-ト104名(静止視力0.7以上)であった。そのうち現役バレーボール選手は、62名(59.6%)である。その結果、全体の静止視力の平均値は、1.01、動体視力の平均値は、0.69であった。現役バレーボール選手の静止視力の平均値は、1.01、動体視力の平均値は、0.65あった。静止視力[A]と動体視力[K.V.A.]の間に[A]×[D]=[K.V.A.]という関係があり、一般人の平均値[D]は、0.7であるが、スポーツ選手の[D]は、さらに1に近づく。測定結果より運動経験者の[D]=0.76、現役バレーボール選手の[D]=0.65と現役バレーボール選手の[D]値は、一般人の平均値を下回った。また、チームの中でもエ-ス級の選手が静止視力0.7未満で、分析から除外したというケースが何件かあり、選手自身も指導者も視力の矯正に対する無関心さが浮き彫りになった。 現役バレーボール選手の動体視力とバレーボールのパフォーマンス(スパイク決定率、サーブレシ-ブ成功率)の関係をみると、動体視力の成績がよい選手ほどバレーボールのパフォーマンスも高いという傾向にある。このデータに関しては、さらに分析、検討を行う必要があると思われるが、さらに運動パフォーマンスと運動視機能との関係を明らかにし、選手や指導者が運動視機能の重要性を認識し、またそのトレーニング方法(ビジュアル・トレーニング)が確立されることが今後の課題である。
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