本研究は、先行研究「イメージを伴う身体運動への同調と反復が気分の変動と顔面表情の認知に与える影響」(平成6年度奨励研究:課題番号80249648)を発展させ、非言語的伝達形式の基礎的形態である「動作の模倣」によってある感情が強化された状態では、他者の身体表出に対する認知が強化され、その後の身体的コミュニケーション行動の強化が認められること検証することを目的として実施されている。 本年度は以下の調査を、短大女子学生15名を対象に行った。 『調査1:感情を喚起する運動の模倣による気分の変動』-基本的勘定質・悲・喜」をイメージ素材として運動フレーズを作成し、被験者に反復させた。実施の前後のPOMS日本語版による気分評定の結果は、「悲」クレーズの実施例では「鬱」および「怒り-攻撃」因子において有意に高い値(P>.01)を示し、「喜」フレーズの実施後では「活性」および「怒り-攻撃」因子において有意に高い値(p>.05)を示した。 『調査2:動的身体表情の評定』-調査1の前後に、CGによって示した動的身体表情「直哉な表現-悲」「直哉な表現-喜」「曖昧な表現-悲」「曖昧な表現-喜」についてその感情状態を評価させたところ、「悲」系フレーズの前後においては正答率が有意に上昇(p>.05)したが、「喜」系フレーズにおいては有意差が認められなかった。 『調査3:身体的コミュニケーション行動の比較』-調査1、2の前後に、未知の人物の身体表現への被験者の対応をVTRにより記録した。現在、空間的関係や行動カテゴリーの変化についてデータ整理中である。
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