研究概要 |
本研究の第1の目的は,縦断的資料に基づいて高齢者における加齢に伴う体力の変化特性を明らかにすること,第2の目的は縦断的資料を用いて高齢者における体力と生活諸条件の関連を検討し,体力の維持及び低下により重要な関与を示す改善可能な条件を明らかにすることであった。第3の目的は高齢者における健康特性を明らかにし,加齢に伴う変化傾向を検討することであった。対象者はS市に存住し,高年大学に参加している65歳以上の高齢者366名であった。高齢者の体力特性を明らかにするために21項目からなる体格・体力テストを,また高齢者の生活条件を捉えるために76項目からなる生活条件調査を2年続けて実施した。本研究における標本,測定・調査項目及び解析方法の下で以下のことが明らかにされた。 1.縦断的資料に基づいて高齢者における加齢に伴う体力特性を検討した結果,多くの体力変量における平均値間には有意な低下傾向は認められなかった。これは1年間という短い期間及び高齢者における個人差が影響したものと推測され,さらに継続的・長期的な検討が必要であると考えられた。 2.体力の維持に影響を及ぼす生活条件は,「生きがいの有無」及び「(身体的活動を伴わない)趣味活動の有無」であり,生きがいを持っていることや趣味活動を行うことは,高齢者における加齢に伴う体力の低下を遅延させる効果があると推測された。 3.高齢者の身体的な側面に関する健康因子を抽出した結果,骨格・関節,呼吸循環器,消化器,神経・泌尿器,皮膚及び感覚器変調に関する要素から構成されていると推測された。しかし,各健康要素において性差及び加齢に伴う有意な変化傾向は認められなかった。
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