研究概要 |
本年度は,まず妙高火山を中心とした地域においてテフラ層序に関する調査を行った.さらに,妙高火山山麓に模式露頭を設定し,系統的にサンプリングを行った.その結果,妙高火山の活動が休止期を挟んだ複数のサイクルに区分されることがテフラから確かめられた.その中にはヴルカノ式噴火を頻繁に行っていた時期も認められた.妙高火山群の風化地域に広く分布している火山灰土の形成にも,このような妙高火山の噴火活動が寄与しているものと考えられる.また,テフラの間に挟まれる火山灰土について予察的な分析を行った結果,火山灰土の粒度組成は淘汰が悪く,その粘土画分には石英,スメクタイト,クロライトなどのテフラの風化では生成されないような鉱物が顕著に含まれることが確かめられた.このことから,この地域の火山灰土は,北海道の火山灰土と同様に複数の給源から供給された風成塵から構成されているものと考えられる.また,この火山灰土の層厚や粒度が,模式露頭において垂直方向に変化するとともに,妙高火山を中心に東西方向,南北方向に変化することが明らかになった.今後風下地域に複数の模式地を設定して詳しく検討を行うことによって火山活動や気候変化など火山灰土の母材を供給する条件の変化と火山灰土の特徴の変化との関係を明らかにすることができるであろう. 一方,風成塵の堆積過程における降雪の影響を検討するために,有雪期と無雪期において現在の大気降下物の捕集を行った.両時期の降下物は主にシルトサイズ以下の粒子からなり,ともに石英,長石,スメクタイトなどの鉱物を含んでいることが確かめられた.なお,積雪・融雪過程の観察から,植生が風成塵の堆積に影響を与えている可能性が確認された.今後,長期的に堆積量を測定するとともに積雪・融雪現象と植生および土壌との関係を検討する必要がある.
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