教育において、図形や文字を立体的に提示できれば、従来の平面的な提示に比べて、理解や認識がより容易になると期待できる。また、近年はパソコンを利用した立体提示が容易に実現できるようになりつつある。また、ハードウエアの高性能化により、動画像の表示も実現可能になってきた。そこで、本研究では、立体画像表示(静止画像、動画像)が学習者の理解および学習効果にどのような影響を与えるかについて調べることを目的に、実験的に検討を行った。 1.まず、2次元画像の表示装置により立体的な画像の表示が可能な、RDSの教育的利用について検討した。市販のソフトによりRDSの動画像を提示し、従来のRDS静止画像提示と比較する予備実験を行った。本研究では、RDSの動画像化により、認識がより容易になることを予想していたのに反し、顕著な改善効果は得られなかった。 2.次に、立体提示による基本的な認識特性を明かにするために、文字を対象として立体静止画像による検討を行った。具体的には、パソコンディスプレイを利用して、フィールド切替えによる両眼提示を行い、文字列を立体的に提示した。ここでは、立体ディスプレイにおける文字の効果的な提示方法を明かにするために、文字の奥行方向の提示位置と読みやすさの関係について実験的に検討した。 まず、立体視が可能な提示範囲を確認するため、被験者に対して、ディスプレイ上での左右像のずれの量に対する文字の認識位置を測定し、複数の被験者が共通して良好に立体視可能な提示位置の範囲を明かにした。次に、読みやすさを定量的に評価するために、数字列の同定実験を行い、提示位置による反応時間の違いを調べた結果、有意な差を認めた。
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