「反省的実践家としての教師」という発想がその地歩を固めてきた今日、教師自身が自己の授業を反省し、その改善を試みることの重要性を疑う向きはいない。本研究では、そうした潮流を踏まえて、わが国の教師の成長過程を「反省(reflection)」という視点で記述し、モデル化することを試みた。 具体的には、小・中学校の教師を対象として、彼らの授業を観察したり、授業に関する感想や改善への方針を聞き取り調査したりした。そして、それらの授業記録やインタビュープロトコルを分析することで、わが国の教師の反省的成長の特徴やパターンを明らかにすることを目的とした。 具体的には次のような研究活動を展開した。 1.初任教師の成長過程の実態把握 今年度小学校に配属された初任者に対して月1回程度のインタビューを継続してみると、教師としての第一歩はまさに戸惑いの連続であったことが明らかになった。インタビューによって、1)子どもとの信頼関係の形成、2)教授ルーチンの構築、3)同僚や管理職との人間関係の形成、4)教材の準備などが初任者にとって大きな課題であったことが確認された。また、時間不足という問題がこれらの課題をより大きな壁とさせることが明らかになった。さらに、これらの問題を解決するための重要なリソースは同僚からのアドバイスや批判であるが、それは初任者が自発的に求めないと得られないということも分かった。 2.教師の授業改善プログラムの開発 中学校の教師たちが共同で実践研究を展開するためのプログラムを開発した。教師たちが自己の問題意識に基づいておこなうアクションリサーチに参加し、それを計画・実行するための資料を提供したり、その方法論を吟味したりするための場を設定した。こうした場を設定することで教師たちの反省が活性化され、情報やリソースを共有する姿勢が確立することが確認された。
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