研究概要 |
現在提案されている多くの知的教育システム(ITS:Intelligent Tutoring System)は,生徒に正確な教材知識を教える機能のみに主眼がおかれており,生徒の心理状態を考慮しているか否かといったような実際の教師が行っているような教授行動とはまだ大きな隔たりがある.つまり,教師は生徒の心理状態や生徒固有の性格を考慮して,各人に適した方法で生徒の学習意欲を高めている.この学習意欲が生徒に起こらない限り,一方的に教示しようとしても学習効果が期待できないことは明白である.そこで本研究では,生徒の性格や心理状態を把握し,それに基づいた動機づけや知識教授を行うことを目的とした新しい知的教育システムの枠組みを提案した. 具体的には,【1】学習者の心理状態を表現するヒューマンモデルの構築,【2】ヒューマンモデルの状態を基に動機づけの指針を推論する推論機構と推論規則(モチベーションルール)の設計,【3】モチベーションルールの獲得手法の提案,【4】試作システムの構築,を行った. 【1】実際のCAIシステムから動機づけ機能に関する調査を行い,どのような方法で動機づけを行なっていけばよいかについて考察した.更に教育心理学の知見を基にヒューマンモデルを設計した. 【2】ヒューマンモデルの状態を基に動機づけの指針を推論する推論機構と推論規則(モチベーションルール)をFuzzy決定木,及びFuzzy If Thenルールを用いて設計した. 【3】モチベーションルールの自動獲得手法として,ID3とGAを融合したFREGA(fuzzy decision tree generator based on genetic algorithm))設計した.本手法は,数値データをもつ決定値とそれを特徴付ける質的データ及び量的データが混在した属性群からなる事例集合に対して決定木を自動的に生成し,ファジィルールを生成するアルゴリズムであり,本モチベーションルールの獲得に有効である. 【4】Power Mac(Apple製)上にヒューマンモデル,及びFREGAを組み込んだ知的教育システムを構築し,システムの動機づけを行なう振舞い,獲得されたモチベーションルール等について考察した.
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