本研究では、統計学に関する知識をあまり持たない利用者に対して、適切な解析作業・解析結果を与えるために、知識工学を応用して計算機側からの支援を行なうシステムの構築を目指した。具体的には、研究代表者により本研究以前に作成された試作システムに対し、以下に述べる3点の改良を試みた。 まず、アルゴリズム再検討による推論速度の改良については、非単調推論アルゴリズムの導入により、推論過程そのものには改善がみられ、統計家の行なう判断に近付いたものの、取り扱わねばならない中途過程、述語数が増大し、知識工学におけるいわゆるフレーム問題と直面することとなった。研究前の予想を覆すほどの量であり、述語数の取捨選択では対処しきれないものと思われ、目的自体は半ば達成したものの、今後、知識ベースに関する再検討の必要性も研究結果として得られたことになる。 次に、判断内容再検討による適用範囲拡大については、先に述べた通り、取り扱う知識量の増大により、わずかに数種の新手法、判断基準を盛り込むに留まった。知識として1基準増えるだけでも、推論過程では指数的に増大してしまうためである。 また、グラフィクスを用いたインタフェース改良については、当初要求していた研究費が得られず、開発環境として不充分な状態であったが、幸い、研究代表者が研究分担者として参加している試験研究(B)(2)「探索的データ解析のための視覚的プログラミング環境の開発(代表者 北海道大学・教授・佐藤義治)」との融合を図ることができ、具体的な成果を挙げつつある。同試験研究で試作対象となっているシステムは本研究の発端となったモジュール部分開発の動機づけともなったシステムであり、本研究との親和性、移植性が極めて高い。このため、現在、動作確認の段階であり、本研究終了時点では完成できなかったが、次年度、同試験研究の成果の一部として、公開できるものと考えられる。また、内容は同試験研究とともに、別紙に提示した通り、今年度末の国際学会で論文発表の予定である。 以上により、本研究は全ての目標を達成し得なかったものの、研究過程による新たな問題点の発見と確認、また、部分的ではあるが具体的な成果を挙げることができ、概ね有益な結果を導出できたと考えられる。
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