研究概要 |
申請者が提案している処理方式"スライドウィンドウ方式に基づく擬似ベクトルプロセッサ(以下PVP-SWと呼ぶ)"の利点は,レジスタ/キャッシュを共有したスカラ処理とベクトル処理の融合を実現する点である.従来のベクトル計算機もスカラ処理とベクトル処理の両方を実現するが,レジスタ/キャッシュを共有しないため,スカラ処理したデータにベクトル処理を施す場合にデータの受け渡しが必要となり,性能が低下する.このような計算の代表として,リストベクトル処理を取り上げ,PVP-SWの有効性を定量的に評価した.まず,PVP-SWと,比較対象として,キャッシュプリフェッチ機構のみを採用するものの2つのプロセッサの詳細なモデルを決定した.その後,命令パイプラインレベルのシミュレーションを行なって評価を行った.評価結果より以下の点がわかった. 1.単純にベクトル化できるリストベクトル処理においては,PVP-SWは,キャッシュプリフェッチ機構のみを持つものよりも2〜3倍高速である. 2.単純にはベクトル化できないリストベクトル処理においても,PVP-SWは,キャッシュプリフェッチ機構のみを持つものよりも約50%高速である.また,PVP-SWのクロック周波数が従来のベクトル計算機より約10倍遅いと仮定しても,PVP-SWはベクトル計算機並みの実効性能を達成することがわかった. 以上のことから,単純なベクトル化が可能か否かに関わらず,提案するPVP-SWが有効であることがわかった.また,単純にベクトル化できない場合は,レジスタ/キャッシュを共有したスカラ処理とベクトル処理の融合が重要であることもわかった. 提案するPVP-SWを実際にVLSIに集積実装する際のコストの見積り,PVP-SWの性能をさらに向上させるために追加すべき機構の検討,の2点は今後の課題である.
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