研究概要 |
当初の予定を以下に示す. (1)プロトコルの検討 並列分散処理のボトルネックである,共有メモリ,バス,ネットワーク等を用いたメッセージ転送の実現に関する基礎的な研究を行う. (2)基本処理系の作成 分散OSに用意されているスレッド機構を用いて,1台の計算機上で並列動作する処理系を作成し,各種処理方式の検討,評価を行う. (3)並列分散処理系の検討・作成 項目(2)で作成した基本処理系と項目(1)で検討したプロトコルを用いた並列分散TRSの実現方法に関する研究を行う. 項目(1),(2)に関する研究は入念な試作および予備実験が行われていたこともあり,順調に進めることができた.詳細は論文『共有メモリ型並列計算機における項書換え系の実現方式』などに発表した. 項目(3)の詳細は『An Implementation of Term Rewriting System on a Distributed Memory Architecture』に報告した.研究のキ-アイデアは分散メモリ型並列計算機に適した自律的BOBモデルである.このモデルはメッセージ・パッシング機構を利用して,上記の項目(1)で検討したプロトコルを実装している.また,実際にこのモデルに基づく処理系をAP1000上で作成し,64台のCPUで最大30倍程度処理が高速化されることと処理系の並列化に対するオーバヘッドは10%程度であることを確認した. 自律的BOBモデルに基づいた処理系では項書換え系の並列性を十分利用することができ,本来の書き換えの並列度が少ない場合でもマッチングを並列に行うことにより並列効果をあげることができることが判った.
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