本研究では、人工的ニューラルネットワークの応用により、工学上重要な組合せ最適化問題であるVLSI配線最適化問題の並列アルゴリズムの研究を行った。ニューラルネットワークは、脳の有する高度な情報処理機能に着目し、その構造を数学的に表現することにより、計算機上に実現するための手法である。ニューラルネットワークを組合せ最適化問題のアルゴリズムとして見た場合における特長は、並列性および汎用性である。すなわち、多数のプロセッサを同時に使用することにより、計算速度の飛躍的向上が図れるのみならず、エネルギー関数と呼ばれる評価式の変更により、種々の問題に適用可能である。 本研究では、まず、VLSIチャネル内配線配置の最適化のため、必要な面積を最小とするための各配線の配置問題に関する並列アルゴリズムの研究を行った。次に、VLSI配線配置の設計上重要なビアと呼ばれるレイヤー間結合点の最小化問題、VLSI配線最適化問題の基礎となる最大クリーク問題の研究も行った。さらに、工学上重要なもう一つの組合せ最適化問題であるネットワークの通信パケット制御問題への本研究成果の適用を図った。これら本研究で対象とした組合せ最適化問題は、いずれもNP完全と呼ばれる困難な問題である。本研究では、それぞれの問題において、ニューラルネットワークに基づく新しい並列アルゴリズムの提案を行った。シミュレーションにより、提案する並列アルゴリズムが、従来アルゴリズムよりも優れた解の精度を得ることを示した。
|