本年度においては、以下の2つの点に注目して研究を行った。 1.ソフトウェア・プロセスの記述とその再利用 ソストウェアを開発する手順を形式的なプロセス記述として表現し、それを再利用できる枠組みに関して研究を行った。教材の作成には、個々の教材がそれほど複雑ではないこと、複数の授業あるいは毎年の授業で作り直されながら何回も同じ教材が使われること、といった特徴がある。従って、教材を開発するプロセス記述は、通常のソフトウェアプロセス以上に再利用される局面が多い。 本研究では、複数バ-ジョンにわたるソフトウェアあるいはプロセス記述の間の相互関係を抽出し、管理するための枠組みを新たに提案した。この研究は、「構文木の相互比較による複数バ-ジョン比較分析方法の提案」(次頁「研究発表」参照)として発表した。また、再利用性の高いプロセス記述手法としてオブジェクト指向に注目し、プロセス記述をオブジェクト指向モデルを用いて記述する実験を行った。この研究に関連する内容が、研究代表者が指導する学生の卒業研究(脇板「オブジェクト指向モデルによるソフトウェアプロセス記述に関する研究」他1編)にまとめられている。 2.ソフトウェア教材としての簡易グラフィックライブラリ 次に本研究では、ウィンドウシステム上で動作する簡易グラフィックライブラリであるEasyGraphicを教材開発の対象として取り上げた。教官がこのライブラリをどのように実際の授業での例題、あるいは演習課題に取り上げるのか、プログラミング教育のどの段階でどのように利用可能か、あるいはこのライブラリ自体に不十分な点はないのか、といった点を中心に検討を行った。この内容は、研究代表者が指導する学生の卒業研究(外村「簡易グラフィックライブラリを用いたプログラミング教材の検討」)にまとめられた。
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