1.オブジェクト指向データベースのモデルとして、Hullらの更新スキーマを採用した。更新スキーマSとデータベースインスタンスIが与えられたとき、S内の任意のメソッドの実行中に結合すべきメソッドが一意に定まるとき、インスタンスIはSのもとで型整合性をもつという。本研究では、与えられた再帰なし更新スキーマのもとで、(1)型整合性をもたないインスタンスが存在するか否か、および、(2)型整合性をもたない無閉路インスタンスが存在するか否かを判定する問題はいずれも非決定性指数時間完全であることなどを示した。 2.次に、メソッドに基づく簡潔なアクセス権モデルを定義した。アクセス権は、(s、c、m)「アクセス主体sがクラスcのオブジェクトに対してメソッドmを呼び出す権利をもつこと」、または、(c、m、c^′、m^′)「クラスcのオブジェクトに対して呼び出されたメソッドmは、クラスc^′のオブジェクトに対してメソッドm^′を直接呼び出す権利をもつこと」のいずれかである。Sを更新スキーマ、sをアクセス主体、AUTHをアクセス権集合とする。本研究では、(1)Sがオブジェクトの属性値を更新する実行文を含まないとき、および、(2)Sが「分岐無し」と呼ばれる制限を満たし、かつ、インスタンスが無閉路であるとき、sがSのメソッドを実行中にAUTHに対してアクセス権違反を起こすか否かを判定する多項式時間アルゴリズムを提案した。 一般にアクセス権のすべてを陽に記述するのは繁雑である。そこで、陽に与えられたアクセス権集合と線形再帰的な推論規則によってアクセス権集合を簡潔に指定できるようなモデルを提案した。さらに、問い合わせ実行時にデータベースへのアクセス要求が起こったとき、それが許可されるか否かを効率的に判定する方法を提案した。
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